リハビリで行う立ち上がり訓練で知っておきたいこと

椅子からの立ち上がり能力と立位保持能力には相関がある?!

リハビリ業界では、立ち上がり動作に関するものや、立った姿勢の保持能力に関する研究が非常に盛んに行われています。立ち上がりの動作と立った姿勢の保持能力は近いようで遠い動作になります。立ち上がり動作は、いわゆる動的なバランスの要素を含んでおり、バランスを取りながら身体を動かすものです。一方、立った姿勢の保持はそれとは反対で、いわゆる静的なバランスの要素が大きいです。その場に留まろうとするためにバランスをとるものです。つまり、この二つの動作はバランスの観点からみると正反対のものであるため、とても相関があるようには思えません。果たして、本当にこの二つの動作には何らかの関係性があるのでしょうか??

こんな研究報告があります。様々な高さの台からの立ち上がりと、立っていられる時間を測ったところ、立ち上がり動作と立位保持能力には相関があり、ADL自立者はこの中に含まれる。つまりどういうことかというと、低い台からの立ち上がりが可能な人ほど長い時間の立位保持が可能であり、立ち上がり動作が困難な方では、同様に立位保持も困難であったという研究結果です。脳卒中などの中枢神経疾患の方でも、立ち上がりなどの日常生活動作訓練をリハビリとしてよく行っているのではないかと思います。この研究結果は、脳梗塞や片麻痺の有無にかかわらずに出ている結果ですので、逆に言えば、どんな方にでもこの結果は当てはまるということです。

また、施設に入所している方の立ち上がり動作能力は、年齢が高齢者ほど成績は優れていたという研究結果もあります。これは年齢が低いうちから施設に入所されているものほど障害の程度が重症であると示唆されています。運動麻痺の重症度が立ち上がり動作能力に関連することは当たり前のことかと思われます。さらにそれは下肢機能により相関しています。麻痺側別では立ち上がり動作能力にはほとんど差はなかったとされていますが、右片麻痺に失語症の影響が現れることも影響があるようです。整形外科的な合併症は、円背よりも変形性関節症の方が立ち上がり動作能力には影響していることが分かっています。このように立ち上がり動作をひとつとったとしても、単に筋力が低下しているからとは片付けず、様々な背景や環境などと組み合わせると面白いデータが見えてきます。

まとめ

・立ち上がり動作と立位保持能力は相関している。

⇒立ち上がり能力を高めたいときに、立位保持能力を高める訓練やエクサイズも有効であり、その逆で立位保持能力を高めたいときにも、立ち上がり訓練を行うと良い可能性がある。

・若ければ立ち上がり能力が高いというわけではない

⇒施設入所者に限ればそれは正反対となり、年齢が高齢なほど立ち上がり動作能力は高い。

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