脳卒中後の拘縮を予防しよう

拘縮予防に必要な良肢位とは

拘縮を予防するためには、良肢位という姿勢が良いとされています。例え一生懸命にリハビリや自分でストレッチや関節可動域訓練を行ったとしても、24時間のうち僅か数分、数時間だけの話です。それ以外の時間のほうが圧倒的に長いため、そういった時間をどう過ごすのかが、拘縮を予防するにヒア非常に重要となってきます。脳梗塞後の麻痺が重度である場合や筋力低下などがあり自力で動くことが困難な方は、特に重要です。

例えば我々が一晩に寝返りを行う回数は、20回程度と言われています。寝ている間に、それだけ体は動いているんです。その寝ている間の寝返りによって、身体の同じ部位に圧がかかり続けてしまうことを調整するのです。仮に睡眠時間が8時間だとして考えてみてください。8時間もの間、同じ姿勢でい続けられますか?相当身体に負担がかかりそうなのは想像出来ますよね。

さて話を戻しますが、「良肢位」とはどんな姿勢なのでしょう。良肢位とは、主に脳卒中などの脳血管疾患に生じやすい不良肢位とならないように行います。脳卒中などの脳血管疾患の場合、脳からの指令が手足に行かず、「ある特定の方向」に手足が位置される傾向があります。「ある特定の方向」の代表的なもので言えば、股関節は外旋(開排姿勢)、足首は内反尖足(つま先がピンとなる)、肘関節は屈曲などがあります。これは筋肉の緊張が高い痙性のときも、緊張が低い弛緩のときも同様です。

なぜ不良肢位が身体に良くないのか?これには大きく分けて二つの理由があります。一次的機能障害と二次的機能障害です。

一次的機能障害とは発症した病気そのものからくる症状のことをいいます。脳卒中などの脳血管疾患では手足に麻痺が出る場合が多く、それにより自由に手足を動かすことが困難な場合があります。発症から間もなくは中々動かすことが難しくても徐々に力が入るようになり、回復の過程や具合は人それぞれですが、少しずつ動かせるようになっていきます。しかし不良肢位をとり続けてしまっていると、そういった時間的な可塑的な変化を阻害してしまう恐れがあります。せっかく動きが出るようになった手や足は「どの方向に動かすのか」「どのように動かすのか」「どこに力を入れるのか」などを再度学習していきます。こういった正しい学習を図っているときに、不良肢位を長くとってしまうと正しい感覚や正しい筋肉の状態から遠ざかってしまい、学習が遅れる、間違った学習をしてしまうことになりかねないのです。

続いて二次的機能障害です。良肢位保持の最も重要な目的はこの二次的機能障害の予防です。自らの意思で身体を動かせないと、長時間同じ姿勢になってしまう可能性があります。その結果、徐々に体は硬直し筋力を失います。関節の拘縮や変形、筋肉の短縮や筋力低下が起こるのです。更に神経系への影響もあります。使っていない神経系も弱化、萎縮してしまいます。筋力は失うのは一瞬ですが、つけるのはとても大変です。関節も一度固まってしまうと、そこから元に戻ることは容易ではありません。こういった二次的に起こる機能障害には十分注意が必要です。

良肢位に適した各関節の角度

肩関節:外転10~30°

肘関節:屈曲90°

前腕:回内外0°

手関節:背屈20~30°

股関節:屈曲10~30、外転10~15°、内外旋0°

膝関節:屈曲10~20°

足関節:背底屈0°

上記の表のような角度が最も拘縮などを予防できる良肢位と言われております。しかし、必ずこれが正しいとも限りません。身体機能や状況によって個人差がありますので、あくまでも参考程度と考えて下さい。さらに良肢位を保持しようとしても、意識障害や麻痺の程度によって崩れてしまうことも考えられます。そこで、良肢位を保持するためにオススメの道具をいくつか教えますね。

・敷布団またはベッドはやや硬めで体が大きく沈みこまないものがよい。

・掛布団は軽くて柔らかいものがよい。

・バスタオル数枚。

・柔らかいクッションを2-3個ほど、または毛布や座布団を使用

クッションも種類や大きさ、硬さなど様々です。良肢位を保持しようとしてがちがちにクッションを敷き詰めてしまうのも良くありません。ある程度動きがあることも想定しておく必要があります。そのためクッションなどはあまり固すぎないものを使うと良いでしょう。無理に強要することを避け、体位の変更時間を短くするとよいとされています。また気が付いたときにポジショニングを修正するなど、根気よく対応しましょう。

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