脳の機能解剖について

脳の解剖生理学的なコト

脳の機能を知る事はとても大事です。少し難しい話ですが、脳梗塞のリハビリにつながる知識になると思います。

リハビリテーションにおける障害の理解に不可欠な神経系の基本構造と機能について、最近の神経生理学的な事実も踏まえつつ書いていきます。

まず、中枢神経系は脳と脊髄にわけられます。脳は大脳、間脳、中脳、橋、小脳、延髄、があります。脊髄は、成人では第1腰椎の高さで脊髄円錐となって終わります。

中枢神経系の外を走る神経は末梢神経とよばれます。この中枢神経も、末梢神経も神経細胞が集まった集合体といえます。

神経幹細胞は、神経前駆細胞とグリア前駆細胞へ分化し、前者は神経細胞へ、後者は星状膠細胞と乏突起細胞に分化します。出生後の神経幹細胞は脳室側端にある神経上皮と考えられています。

脳の形成は神経幹菅の脳室側で神経上皮細胞が分裂を繰り返し、脳表にあたる軟膜側へ移動し、発生中の最終分裂を終えた神経細胞は機能的に関連のある細胞同士が集合し階層構造や神経核を形成する為に移動します。この神経細胞の移動の異常は、てんかんや知的障害(精神遅滞)、運動失調などの原因となります。

中枢神経系の組織的な発達と機能的な発達は表裏一体の関係にあります。基本的な運動や感覚、認知機能の発達は出生前の羊水の中での無重力状態での運動で始まり、出生後の重力化での運動、母親などからの刺激を通じて、多様な情報処理を形成していく過程であります。これらは刺激を受け、情報処理、認知、意思決定、行動の形で特異的な情報処理の神経回路が強化されていく過程です。この過程において、遺伝的な情報に基づく組織や機能の変化と、使用頻度に依存する組織や機能の変化によって、大脳では機能局在とその間の神経路が形成強化されていきます。ヒトの中枢神経の神経細胞や、神経細胞が軸索を伸ばしたり、シナプスを形成する能力は、加齢に伴って低下します。しかし、変性疾患の場合を除いては、高齢になっても新たな学習あるいは記憶が可能であることから、神経路の形成強化は年齢に関係なく可能です。加齢による運動能力や記憶力の低下の背景には、神経細胞数や神経突起数、シナプス数の減少があります。人の脳は80歳までに重量や、体積の10%を失います。加齢によって多くの神経細胞が脱落すると考えられていましたが、新皮質における神経細胞の脱落は20~90歳の間で10%程度とされています。神経細胞の加齢による変化は老人斑と神経原線維変化に代表され、アルツハイマー病ではそれらの増加が著しく、神経細胞の脱落が大きいです。

人の大脳半球は、皮質(灰白質、白質)、大脳基底核からなります。大脳半球は、大脳回、大脳溝に基づいて、形態的に前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉、辺縁系に分けられます。大脳皮質は、6層の構造が特徴の新皮質、それがない古皮質、旧皮質に分けられます。古皮質と旧皮質を合わせて大脳辺縁系と呼んでいます。新皮質は暑さ3~4mmで、表面積にして2600㎠に及び、28×10の9乗個の神経細胞と同数のグリア細胞を含んでいます。これらの神経細胞は皮質の神経細胞相互や他の領域の神経細胞との間に10の12乗のオーダーのシナプスを形成しています。機能単位として、似た機能の神経細胞は円柱状に集まって存在し、コラムと呼ばれます。大脳基底核は錐体外路の中枢であり、尾状核、淡蒼球、被核、視床下核、中脳の赤核、黒質からなります。尾状核と被核をあわせて線条体、被核と淡蒼球を合わせてレンズ核とよばれています。皮質下白質は神経線維からなり、それは結合部位により分類されます。

投射線維は皮質と皮質下核や脊髄を結び、放線冠をへて視床と被核や淡蒼球の間にある内包を通るが、内包では一定の配列があります。

前脚:主に視床から前頭葉への線維

膝:皮質運動野から脳幹運動神経核への線維

後脚:主に運動野からの皮質脊髄路、視床から皮質感覚野、頭頂葉、側頭葉、後頭葉から橋核への線維、視放線,聴放線

このような配列があります。

そして交連線維があり、結合部位は左右の半球皮質で、脳梁、前交連、後交連、海馬交連、手綱交連を形成しています。

連合線維の結合部位は同側の半球皮質の間です。

間脳は、視床、視床下部、視床腹部、視床上部からなり、第3脳室を囲んでいます。視床にはいくつかの核があるが、機能的に2群に分けられます。特殊核は感覚と運動に関連して特定の大脳皮質と結びます。すべての体性感覚は視床を経由して大脳皮質に至ります。非特殊核というものがあります。皮質と広く結合して活性化を行う網様体賦活系です。そして、視床下部は機能的に自律神経系の高位中枢で下垂体を介して内分泌機能にも関係します。

小脳は延髄と橋の背面にあって、第4脳室を覆い、小脳皮質と小脳核からなり、外見的に左右の小脳半球と中央の虫部にわけられます。小脳は上・中・下の3つの橋脳脚で脳幹とつながっています。皮質にはプルキンエ細胞、ゴルジ細胞などがあり、白質内には歯状核などの4つの小脳核があります。小脳は固有感覚と平衡感覚の入力をうけており、小脳からの出力は運動制御に重要です。

中脳は橋の上端から上丘の上縁まで、中脳蓋、被蓋、大脳脚底、に分けられます。脳神経核、そこから出る脳神経(動眼神経、滑車神経)があります。中脳蓋は上丘と下丘があり、上丘は光に対する反射路に含まれ、下丘は聴覚の中継点となります。被蓋は内側毛帯、外側毛帯、網様体投射線維が縦走するほか、無意識の運動と姿勢制御を行なっている赤核があります。大脳脚底は黒質があり、基底核と結合して運動制御に関係しています。

続いて橋についてかきます。橋は腹側の橋底部と背側の被蓋に分けられ、両側に中小脳脚があります。橋底部には皮質脊髄路線維、皮質延髄路線維などが縦走し、被蓋には脊髄毛帯(前・外側脊髄視床路)や網様体などのほか、脳神経核、そこから出る脳神経(三叉神経、外転神経、顔面神経、内耳神経)があります。

延髄は橋の下端から大後頭孔の下端までで、灰白質には脳神経核、そこからでる脳神経(舌下神経、迷走神経、副神経、舌下神経)があります。延髄下端の錐体で、左右の皮質脊髄路が交叉してから脊髄の外側皮質脊髄路となります。呼吸、嚥下、循環などの中枢もあります。

脊髄は円柱形した神経組織で、成人では環椎上縁から第1~2腰椎に位置します。脊髄には、上肢と下肢への神経が出入りする頚膨大部、腰膨大部があり、下端に脊髄円錐、終糸があります。脊髄の横断面の中央には中心管があり、それを取り囲むように灰白質、その外側に白質があります。灰白質は、細胞体と、樹状突起を含み、H字状で、腹側に前角、背側に後角があります。前角は主として運動神経細胞群からなり、その内側には体幹、外側に四肢を支配する運動ニューロンがあり、後角は感覚神経二次ニューロンです。白質には上行神経路と下行路があります。脊髄には多くの反射中枢があります。

続いて脳血管系の解剖について書きます。脳は、左右の内頚動脈と椎骨動脈から栄養されています。内頚動脈は頭蓋底で頭蓋骨を貫いて、頸動脈サイフォンを形成し、後交通動脈、前大脳動脈、中大脳動脈となります。椎骨動脈は頸椎の横突孔の中を上行し、大孔を通り頭蓋に入ります。後下小脳動脈を分岐後、両側の1つになって脳底動脈を形成し、前下小脳動脈、上小脳動脈を分岐後、両側の後大脳動脈になります。ウィリスの動脈輪は左右の前大脳動脈を繋ぐ前交通動脈、中大脳動脈、後大脳動脈並びに、その間を後交通動脈によって形成され、左右あるいは前後を結ぶ側副血行路として働きます。主幹脳動脈の灌流域として前大脳動脈は大脳半球の背・内側面・中大脳動脈は広く側面を灌流し、後大脳動脈は後部内側面と底面を灌流しています。

続いて静脈系の話です。大脳を潅流する静脈系は、表層からの血流をうけて浅大脳静脈系、深部からの血液を受ける深部静脈系からなり、この2つの間を上吻合静脈と下吻合静脈がつないでいます。大きな静脈は、矢状静脈洞、横静脈洞などの硬膜静脈洞にそそぎ、内頸静脈に集まります。

中枢神経を囲む構造と髄液はどうなっているのでしょうか。中枢神経は、硬い骨と脳脊髄液に囲まれて保護されています。外側からは、頭皮、僧帽腱膜、骨膜、頭蓋骨、髄膜、くも膜、軟膜、灰白質の順番に並び、くも膜と軟膜の間にくも膜下腔があり、くも膜は髄液で満たされています。脳脊髄液は125~150mlあり、一日430~450mlが脳室の脈絡叢で産瘤され、くも膜下腔を流れて、くも膜下粒で吸収されます。くも膜下腔は脊髄では第2仙椎のレベルまで伸びています。

中枢神経系の機能について考えてみましょう。大脳は運動は前頭葉、視覚は後頭葉がというように、それぞれの領域は特定の機能をになっていて、これを機能の局在といいます。一次運動野では実際の身体の配列に従って身体各部の支配野が並び、さらに各支配野は機能単位であるコラムからなっています。各支配野の大きさは情報処理量に依存するため、発語に関連する舌・顔面・道具使用などは繊細な運動を行う手指の支配野は著しく大きいです。大脳は、入力と出力に直接関連する一次の感覚野(身体感覚野、聴覚野、視覚野、)と運動野、及び運動前野や視覚前野などの二次の中枢と、それ以外の連合野に分けられます。大脳皮質における機能の分布は皮質の細胞構築学的特徴(ブロードマン分類)などになどと関連があります。大脳皮質からの運動指令を伝える運動線維は主に錘体路を通ります。

錘体路は前頭葉中心前回の一次運動野から内包後脚を経て中脳、橋、延髄を通り、延髄下部で対側交叉し、脊髄側索を下行して脊髄前角細胞に達します。錘体路の線維の一部には、延髄で交叉せず同側の前索を下行するものがあります。この運動野から脊髄前角細胞に至る錘体路がどこで障害されても中枢性の運動麻痺を起こします。特に、線維が密に収束する内包以下の障害では脳神経領域を含む片麻痺を起こします。

表在覚は(触覚、痛覚、温度覚)は脊髄後根から後角に入り、そこで神経細胞をかえ、反対側にうつり、脊髄視床路となって脊髄前索及び側索にまたがって上行、視床後外側腹側核、内包後脚、大脳白質を上行して、頭頂葉一次身体感覚野に至ります。ただ、触覚の一部は脊髄で神経細胞を変えずに同側の後索に入り、深部感覚線維と一緒に上行します。

深部覚は脊髄後根から入って同側の後索を延髄まで上行し、脊髄背側の薄核または楔状核で神経細胞をかえて、延髄で交叉して対側の内側毛帯を形成して上行、視床後外側腹側核、内包後脚、大脳白質を上行して頭頂葉中心後回の一次身体感覚野に至ります。感覚によって末梢の受容器から視床に至るまでの走行経路が異なるため、脊髄、延髄、橋の障害では表在覚か深部覚かどちらか一方の障害が中脳上部から視床の障害ではどちらも障害されることが多いです。

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