右脳の役割とは

脳は大きく、右と左の二つに分かれています。

いわゆる右脳、左脳のこと。

それらをそれぞれ右脳=右半球、左脳=左半球と言います。

今回はその「右半球」に着目した脳機能について記述します。

右半球(右脳)の役割

右半球と左半球で担っている機能には差があります。

それぞれに役割が違うんですね。

いわゆる「言語機能」は多くの人では、左半球に著しく側性化されています。

失語症は、右利き者では9割が左半球損傷によって生じるとされています。

行為の高次の障害である失行も左半球損傷に特異的といえます。

一方、右半球が担っていると考えられている機能として、

①顔貌の同定などの複雑で非言語な認知

②注意

③情動と気分

④コミュニケーションにおける言語の周辺機能

などがあげられています。

そのうち、注意障害、とりわけ半側無視は、行動範囲から推察することができます。

それ以外は、観察者がそういう観点で眺めて初めて察することができるようなわかりにくさがあります。

右半球損傷者の示す症状を、ある視点から見て「この現象であろう」と推察する段階の症状が多いため、責任病巣についても、左右半球間の差異なのか、前頭葉症状なのか十分に検討されていない症候もあります。

今回は、右半球損傷者に多く推察されるいくつかの症状について紹介し、左右半球が認知面で本質的な差異を持っているかについて考察してみます。

注意障害や、病態失認など右半球症状も同時に考えていきましょう。

右脳の障害に特徴される障害

方向性注意障害とは半側無視のことで、左半側無視では左側で起きている事象に気づかなかったり、左側の事物にアプローチしなかったりします。当人の左半身を使わなかったり、左半身の麻痺に気づかなかったりもします。

左半球損傷では通常そういうことはあまり顕著ではなく、右半球に側性化された機能の喪失によって生じていくと考えられるのが一般的です。

視覚性注意の分担範囲が左右半球で非対称なためという説明、大脳半球があるという考えなどがあります。

右半球損傷者にしばしば、覚醒度の低下が観察されます。

さらにビジランス、すなわちなんらかの事態が生じることを予測して、それに備えた状態を維持することは、右半球損傷によって障害されます。

あまり重要でない情報を無視し、特定の情報だけに焦点をあてる選択的注意も右半球では障害されます。

例えば背景刺激の中にあるターゲット刺激を抹消する課題で、見落としが生じやすくなります。

このテストでは左側のみおとしが増えやすく、選択的注意の障害が半側空間無視の基盤の1つと考えられています。

右半球損傷例で、行動を適切に維持することの障害がしばしばみられます。

運動維持困難症を有する方は閉眼と挺舌を同時に行い続けることをお願いした時、途中でやめてしまいます。

その検出条件として、複数の行動を同時に行わせた場合に、一方の行動が中断されるということも重要な特徴で、注意の配分の問題の範疇で扱うことは妥当だと思われます。

また、現象的には行為の維持の障害ではあるが、「勝手にやめてしまう」という事が問題とも考えられます。

右半球損傷者はある行動をとり続けよるようにもとめられていることに応えてそうあり続けようという意思を持っているのに行動が中断するというより、そういう意思自体を持ち続けないように見えます。

この行動とその制御の問題という視点からは、前頭葉に配慮する必要がありそうです。

運動維持困難症の病巣研究では、左前頭葉病変の関与が指摘されています。

右半球損傷者は行為が性急な事が多く、意識的にゆっくりと運動することができないものをパッシングの障害と呼びます。

この障害の責任病巣として、右半球の中大脳動脈領域前部が重要だと指摘されています。

右半球、中でも、右中大脳動脈領域の広範囲な損傷に伴った左片麻痺例ではしばしば麻痺を否認することが知られています。

麻痺肢について問われると、自分の手足を他人のものと述べたり、人格を持った他者であると述べたりするケースもあり、身体パラフレニアと呼びます。

この様な反応の背景には身体図式の障害、脱抑制、麻痺を否定する抑圧反応など種々の概念で説明が試みられていますがその本質はまだわかっていないことがあります。

また、対象物の呼称においても、失語症によるものとは異なった誤りを示します。

ある特定のカテゴリーの物品に対してだけ誤った呼称をするとも言われています。

その背景には、両側・深部病変があると言われています。

また、重複記憶錯誤という現象があります。

今いる場所を尋ねられると、病院に入院しているにも関わらず、ここは自宅であると答えたり、周囲の人物や病室であることを指摘されながらも、同時に自宅であるとも確信しています。

様々な現実認識の差異は右半球損傷時にみられますが、右半球症状だけではなく、より広範囲な脳領域が関わっているという意見もあります。

トロント、ヨーク大学のEllen Bialystok博士は、中高年層を対象に言語運用能力と認知機能能力の関連を調査した結果、2か国語に通じる事が加齢に伴う認知機能低下の予防になることに気づき発表しています。

人の知能には加齢によって失われることのない習慣知識や習慣的行動等の「結晶化した知能」と加齢により低下する注意保持力という「流動的知能」があることが知られています。

流動的知能は加齢により失われていくといわれていますが、バイリンガル、2言語使用者はその低下が抑えられると言われています。

すぐにバイリンガルになるのは難しいですが、日頃から自国語以外の言語に意識を持つこと、持ってもらえるように促す事はとても大事だと思います。

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