片麻痺の回復にはどのくらいの時間がかかるのか【脳卒中/脳梗塞】

この記事はこんな方に読んでほしい

●自分が脳梗塞や脳出血を発症した方
●自分の周りの人が脳梗塞や脳出血を発症した方
●脳梗塞後遺症の回復過程が気になる方
●発症して時間が経過している方

片麻痺の回復過程とは

一般的に脳梗塞を発症すると、主に片麻痺や失語症、感覚障害などの「何かしらの後遺症」が残ることがあります。そのため介護が必要になる可能性が高い病気として有名ですね。その後遺症は、発症してから少しずつ時間をかけて回復していきますが、その回復の過程は人それぞれです。どの程度回復するのか、いつごろ回復するのか、あるいは回復しないのか。脳卒中後の片麻痺は発症してからある程度の回復が見込めるとされています。しかし発症する前と全く同じ状態まで回復することは少ないとされています。

片麻痺の回復の程度を決定する因子としては、主に脳の障害された部位、(脳出血であれば)出血の大きさ、発症時の麻痺の重症度、発症後の経過、年齢、発症する前の神経状況、生活史など様々な因子が絡んで総合的に決定されます。つまり脳卒中後の回復には個人差がとても大きいのです。そのため、「この人はこう」などと一括りには出来ないのです。比較的早い時期から回復する方もいれば、そうではない方もいます。ゆっくり時間をかけて回復する人もいます。回復が停滞したのち、再度回復する方もいます。様々な症状もありますので、症状によっても回復には個人差があります。

当然リハビリをどの程度行うのか、どんなリハビリを行うのかによっても改善の度合いは異なります。脳卒中を発症するとまずは急性期病院と呼ばれる病院へ行くことが一般的です。ここでは発症した病気の治療、必要であれば手術が行われ、その経過を観察しています。どちらかというとリハビリ主体というよりかは治療や病状の安定が優先されるところになります。脳梗塞の種類によっては、段階上に症状が増悪するものもありますし、血圧や全身状態の安定を図ることはその後のリハビリを進めて行く上でも非常に重要です。

一般的に発症後より状態が落ち着いてくるとともに、片麻痺からの回復が認められます。最も回復する時期としては、発症して最初の一カ月です。発症後一カ月に最も片麻痺の回復が認められる傾向にあります。これは出血した血液が吸収されることや、脳内でむくんでいた部位が治まってくるためです。更に脳卒中の重症度によっても、片麻痺の回復過程には違いが認められます。

ラクナ梗塞や小さな梗塞などの比較的軽度な脳梗塞の場合は、それに比例して片麻痺の回復は比較的良好といわれています。後遺症もほとんど感じないほどといったケースもあります。その反面、発症後一カ月で麻痺の回復はほぼ固定される傾向にあるとの話もあります。一方、中等度から重度の片麻痺でも時間の経過とともに回復は認められます。やはり、いずれにしても発症してから最初の時期は回復を目指すうえでとても重要でしょう。

しかし症状の比較的軽い脳梗塞に比べて、著しい回復は困難な傾向があるとされています。大なり小なりの何かしらの後遺症を残すことが多いとされています。中等度の脳卒中では発症後三カ月まではかなりの片麻痺からの回復が認められます。重度脳卒中では発症後六カ月までは緩やかな麻痺の回復が認められます。このように麻痺の程度によっても回復の過程や回復スピードに差があります。

そこで前述した急性期病院から病状が安定して行くと、次は回復期病院と呼ばれるリハビリを主体に行う病院へ転院する運びとなります。この回復期病院の多くはリハビリを365日、つまり土日も祝日も関係なく入院中は毎日リハビリが行われます。リハビリの量も急性期病院とははるかに違い、ほとんどの人が1日に2時間から3時間のリハビリ時間が用意されます。リハビリは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による分業であり、それぞれが手や足、歩行訓練や生活動作訓練、嚥下や言葉のリハビリを行います。発症後六ヶ月間は回復が顕著であるため、回復期病院の入院最大期間は180日と設定されています。この180日間毎日リハビリの量を積み重ね、退院後の生活へつなげていくのです。何と言ってもリハビリの量を確保することは回復にとって最も重要です。

「発症して半年が経つと、もう回復はしないって本当?」

これはかなり昔からリハビリや医療業界で言われているもので、今でもそのように言う方もいます。もしかしたら皆様の中にも「もうこれ以上は回復しません」と言われたことあるって方もいるんじゃないでしょうか?

当店のご利用者様の中にも、入院中あるいは退院後に「これ以上は回復しない」「もうこの先、手が動くことはありません」などと言われた経験を持つ方もいます。

しかし、果たして本当にそうなのでしょうか。

答えはNoです。今では全く違います。例え緩やかでも、片麻痺からの回復が発症後の月日に関係なく起こり得ると今ではいわれています。ただし日にち薬というわけではなく、リハビリを行うことによって片麻痺からの回復を目指せるものであることが前提。
とくに重症の麻痺がある場合でも比較的年齢が若い場合、発症一年までの回復が続く例は結構ありますので、一概に期間を定められない難しさがあります。特に手に関しては発症後6ヶ月を経過してからでも回復が見られるとの報告もあります。発症してから半年が経過しても、リハビリ病院を退院したあとでも、やはり地道にリハビリを重ねていくことが日々の回復につながります。

例えばミラーセラピーなどは発症から期間が経過していても効果がある、改善が見られたという報告もあります。

また、脳機能の回復とは別に、身体の使い方を学ぶことはその人自身の日常生活動作に大きく影響を与えます。手足の動かしやすさやスムーズさ、楽に活動できることを身体で学習することは発症後の経過期間には関係ありません。人間の身体に動く指令を与えるのは脳、神経系ですが、その動きを実現するには筋肉や関節自体の状態も影響します。動きを実現するために必要な筋力が備わっているのか。筋肉がどう力を発揮すれば良いのか理解できているのか。どんなタイミングで筋肉が力を発揮すれば良いのか。

スポーツなどでイメージすると分かりやすいかもしれません。例えばピッチャーが強いボールを投げたいと思ったときに何をトレーニングしますか?
当然筋力を増強するためのトレーニングも必要ですね。しかしそれだけではせっかく備わった筋力を正しく活かすことができるとは限りません。
どんなフォームで投げると良いのか。どんなタイミングでボールを投げるのか。足の幅はどのくらいが良いのか。目線。顔の向き。体の開きなど。一つ一つの動きが正しく組み合わさることでより効率的な、効果的な運動能力を発揮できるのです。
つまり筋トレだけではなく、その人自身がどう体を使うことが最適なのかを知り、それを実現できることを覚えていくこともリハビリにおいて非常に重要なことと言えます。

脳卒中や脳梗塞などの中枢神経疾患での後遺症では体の動かし方などが困難になるケースがとても多いので、闇雲に力を発揮しようとしてしまいがちです。
自分の体と向き合い、動きのイメージやコツを覚えていくことで、闇雲な力任せの動きから解放し、もっと楽に効率的にスムーズに動かせる方法を習得していくことも必要になるでしょう。
先述したように、動かし方や身体の使い方を学習していくことには期限や発症してからの日数は関係ありませんからね。

そして何より最も大切なのは、諦めない気持ち。ちょっと非科学的な言い方になってしまうのですが。。。
でも、諦めてしまっては、本当は回復する可能性があったとしても、そこで途絶えてしまいます。諦めずに地道にリハビリを行うことで時期や期間に関係なく回復できるのです。
個人的には量も質もどちらも重要だと思っています。しかし、無理をしてオーバーワークになってしまっては本末転倒です。
無理のない範囲で出来るところからコツコツと進めていくことをオススメします。

Follow me!