なぜ脳梗塞は人によって症状が違うの?

なぜ脳梗塞は人によって症状が違うの?

脳梗塞や脳出血が起こると様々な症状が出ます。運動麻痺、感覚障害、失語症、注意障害、構音障害、半側空間無視などなど。本当に整理しきれないくらいの症状があり、またその症状の強さや程度もまちまちです。同じ脳梗塞でも、人によって全然症状が違うんです。その理由は、脳にはそれぞれ細かな役割が各部位に割り振られており、その部位によって特性や機能が決定されているからです。

よく脳を絵に書いたときに、脳のしわがありますよね。あのしわが脳の部位を分けている溝になっています。全部で52の領野に分けられます。たくさんのしわが重なり合って、52領野をつくっています。52の領野にはそれぞれの機能がありますが、これを大きく分けると4つに分けることが出来ます。この4箇所を場所別に整理してみます。

運動麻痺を引き起こす「前頭葉」

大脳半球の最前部にあります。その名の通り、脳の前部分にあるのがこの前頭葉です。前頭葉は中心溝という脳を前側と後ろ側に分けている溝があり、この溝より前側にあたります。大枠としての機能は、思考や記憶などを行うこと、四肢の運動に関与しています。真ん中の溝の前の場所を中心前回といい、ここは運動を司る運動領野と呼ばれています。この運動野が障害されると運動麻痺がおこります。それだけでなく、この運動野からは手足まで伸びる錐体路という長い神経があり、この神経がどこかしらで損傷すると運動麻痺がおこります。脳梗塞や脳出血の起こりやすい視床や被殻などはこの錐体路が近くを通るため、運動麻痺になるのです。

左右いずれかの中心前回の下側には運動性言語中枢というものがあります。この場所が障害されると、運動性失語となります。失語症にも種類があり、この前頭葉で起こる失語症は運動性失語です。運動性失語とは、いわれたことは理解できるものの、思った通りに話せない、言葉を出せないことです。

失語症を引き起こす「側頭葉」

左右大脳半球の外側にあります。外側溝という上下を隔てる溝があり、この溝のいわゆる下側がこの側頭葉です。側頭葉の機能は音の理解や、聴覚、嗅覚、味覚の認識を行います。特に重要なのは、優位半球には感覚性言語中枢があるということです。この場所が障害されると、言語の近いが障害されてしまうため、意思の疎通が難しくなります。これを感覚性失語といいます。同じ失語症でも、前頭葉が障害されたときにおこる失語症とは異なる症状になります。他にも聴覚障害やめまい、精神運動発作や四分の一半盲、失読症がみられます。

感覚障害を引き起こす「頭頂葉」

前頭葉の後方、側頭葉の上方で、頭のてっぺんあたりにあります。先ほどの中心溝の後ろ側で外側溝の上側にあたります。頭頂葉の機能は行動、計算、書字、感覚などを支配しています。特に真ん中の中心の溝のすぐ後方を中心後回といい、ここは感覚を司る感覚領野と呼ばれています。反対側の身体からの感覚(温度感覚、痛覚、触覚、深部感覚)などの知覚が視床という場所を介してこの部位に伝達されます。手足の「触られた感覚」「熱い冷たい感覚」「痛みの感覚」「動かす感覚」がこの感覚領野に伝達されるため、この部位が損傷すると、「触られたかわからない」「熱いか冷たいかわからない」「痛いかわからない」「どこに手があるかわからない」といった感覚障害を引き起こします。他にも頭頂葉の障害では、身体各部の認識であったり、左右の区別、計算ができなくなることがあります。

目に関係する症状を引き起こす「後頭葉」

大脳半球の後ろ側に位置しています。主に視覚に関与しています。脳卒中による目の症状も様々で、片目が見えなくなるものや両目の左右どちらかがみえなくなるものなど多岐にわたります。それらはこの後頭葉がどのように障害されているかで決定されています。他にもこの部位の障害により失読症が発生したり、デニーブラウン症候群が発生したりすることがあります。

まとめ

前頭葉:運動、思考、記憶

側頭葉:理解、聴覚

頭頂葉:感覚

後頭葉:視覚

このように脳にはさまざまな特性があり、そのしわの場所ごとに細かい機能や特性が決められています。逆に言うと、脳梗塞や脳出血などの発症した場合、どこが障害されたかでどのような症状が発生するか予測することができます。そのためにMRIやCTの画像を見ることは非常に重要なことが分かりますね。また障害や脳の損傷の大きさによっても症状と比例する部分もありますので、場所だけでなく障害や脳の損傷の大きさも把握しておきましょう。

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