脳卒中のリハビリで考えなければならないこととは?

脳梗塞や脳出血などの脳や脊髄の細胞が損傷してしまうと、中枢神経系に何らかのトラブルが生じてしまい様々な後遺症が残ることがあります。そのため、介護が必要になる病気の第一位が脳卒中になります。

脳卒中のリハビリテーション

◇運動麻痺や症状の程度

脳卒中の症状には、手足が思うように動かなくなる運動麻痺や触られている感覚が鈍くなったり、逆に過敏になったりする感覚障害などがみられることがあります。運動麻痺は基本的には、脳の障害部位とは反対の手や足に見られることが多く、その程度は脳の神経がどの範囲をどれくらい損傷したかによって症状は変わってきます。

◇脳卒中のリハビリ効果

リハビリが麻痺の改善を決定しているわけではありませんが、リハビリは適切なものを行う必要があります。そのため、ただ足を動かすや歩くだけでは大きな改善は望めません。その方の状態に合った最も適切なリハビリを提供することは非常に重要になります。その状態を適切に評価する必要があります。どんな運動でもまずは継続して行っていきましょう。

◇脳卒中の麻痺に対する訓練と残った能力の訓練

実際に病院においても『麻痺に対する訓練』『残った能力の訓練』を同時に行っていきます。例えば、右利きの方が右麻痺になると普段の日常生活で食事をとる際に右で食事をする事が困難となります。そのため、実際のリハビリでは麻痺症状のない左手の操作を練習します。それと同時に麻痺している手にも感覚トレーニングや動作練習を行うことで麻痺に対する訓練も行っていきます。後遺症は、日常生活に支障をきたしてしまう可能性があります。中でも「歩行」に何らかの症状や後遺症があり、「歩けなくなってしまう」方や「歩きにくくなってしまう」方がいます。

ただ歩くだけでは歩きの改善にはならない?!

脳梗塞に限らず、病気や怪我をし、リハビリを必要とする方の多くは歩行を目標に掲げています。「トイレまで歩けるようになりたい」であったり、「買い物に行けるようになりたい」であったりです。そこまではいいですよね。歩くことがいかに重要かは誰しもが理解していますから。じゃあそのためにどうするのか?たくさん歩けばよいのでしょうか?

答えはノーです。

正確には限りなくノーですね。また歩けるように、躓かないように歩けるように、と思っている方。歩く量が歩きの内容を変化させるわけではありませんよ。歩く量で効果があるのは、その分のカロリーを消費できることや、いわゆる心肺機能を高めることです。逆にがんばってたくさんたくさん歩こうとして体に余計な力が入ってしまうことが、歩き方を変化させてしまっている可能性もあります。病気になる以前の歩きを思い出してみてください。歩くことを頑張っていましたか?歩くことに頑張る必要がありましたか?

歩き方を変化させ、正しい歩きを学習する歩行訓練

これにはいわゆるコツがあります。様々な症状や後遺症があると思いますが、みなさんに意識してほしいことがあります。これを少し意識してみると、これまでよりも少し「体が軽く感じたり」、「足が出しやすくなったり」すると思います!

1.体の軸を意識する

体の軸って何だと思いますか?イメージしてほしいのは、立った姿勢で頭のてっぺんから一本芯が通るような感じです。串刺しになっている感じです。この軸がいかにブレないかが歩きの安定性に関係してきます。ブレには、左右のブレ、前後のブレ、上下のブレがあります。この多方面の安定が図れて初めて歩きは安定してくるのです。ですので、歩くときに一本の芯を意識してみて下さい。

2.リズムやテンポを意識する

もう一つ重要なのは、このリズムやテンポです。歩くときに足を大きく上げたり、踵からつこうと意識してしまうと、歩行のリズムバラバラになってしまいます。歩幅などを意識される方はいるかもしれません。そういう方はこのリズムを意識してみてください。テンポよく足が出ると体のブレが少なくなります。無理やり足を出そうとしなくなり余計な力が抜けて体が軽くなると思います。こういった少しの意識が歩きには大切です。頑張りすぎてはいけません。少し肩の力を抜いて、深呼吸をして、気持ちを穏やかにやっていきましょう。

では、リハビリの効果とは何でしょう?

リハビリの改善効果は大きく分けて2つ

◇一つは短期的改善

リハビリを行ったその場でのビフォーアフターです。柔軟性、体の軽やかさ、スムーズな動き、力の入れやすさなど比較的感じられることはたくさんあると思います。「足が軽くなった」「足が地面についている感じが分かる」「手があがるようになった」などご利用者様に言って頂くことが多々あります。

◇長期的改善

ある程度の期間で変化が生じているかを判断するものです。この【ある程度】に定めはありません。「杖なしで歩けるようになった」「怖くなくなった」「字が書けるようになった」など、積み重ねた結果によって生まれるものです。いいですか、大事なのは「積み重ね」です。目に見える効果がすべてではありません。目に見えない効果は、「=効果がない」ではありません。「今は目に見えていない」が正解です。目に見えるほどの効果とは表面上に出ていないだけで、体内あるいは脳内では必ず変化を生じています。

脳卒中リハビリにおいてはどちらの効果も重要

短期的改善と長期的改善、どちらがより良いのか、どちらを求めていくべきか。

この質問に答えはありません。どちらも脳卒中後のリハビリにおいては非常に重要だからです。脳卒中のリハビリは、たった一回のリハビリですべてが解決できることなど、あり得ません。そんな簡単に済む話なら、リハビリはいらないでしょ。改善や回復にはある程度の期間が必要です。期間はヒトによってまちまちです。最終的な話でいえば、長期的に改善していることが目標だと思います。しかしその長期的な改善には、必ず短期的な改善も必要です。短期的な改善が見られないと、長期的な改善には結びつきません。「短期的な改善=目に見える改善」と「目に見えない改善」の両方が重なりあい、積み重なり、脳細胞や身体に重みづけされます。これが「脳卒中後のリハビリによる改善」です。

一回一回のリハビリで必ず目に見える変化がなくてもいいのです。行く末をしっかり見据えて、リハビリとその対象になる方を信じて。非科学的な意味ではなく、諦めない気持ちが重要です。最もリハビリの改善で大切なのは、その方が良くなりたいという強い意志だと。皆さんのその気持ちを全力で応援しています。

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