脳梗塞後の拘縮に関するデータ

脳梗塞などの脳血管疾患患者100名のうち、両側麻痺や麻痺なしなどの18名を除く82名の片麻痺患者を対象に、拘縮の実態を分析した研究があります。その内容をまとめてみました。

この研究は患者一人につき頸部、体幹、手指、足趾を除き14関節の44運動方向について分析したものです。ここでは、主に麻痺側と非麻痺側、麻痺の程度、亜脱臼などの項目で分析をしたため、頸部と体幹は分析するデータから除外して上下肢に限定しています。

関節や運動方向に着目した分析

82名で測定値が得られた関節数は、ギプス固定部を除く1147関節であり、運動方向数は3606方向であった。そのうち761関節に制限があり、測定した全関節の66.3%を占めていた。運動方向では、1662方向に制限を認め、測定した全運動方向の46.1%を占めていた。

患者の属性、動作能などに着目した分析

年齢、発症からの期間、基本動作能力、日常生活活動能力、日常生活自立度などの要素が制限角度に影響を及ぼすという実態が示された。

麻痺に着目した分析

①非麻痺側にも制限があり麻痺側の方が制限角度は大きい

実測角度が参考可動域を占める割合を非麻痺側と麻痺側で比較した結果、上下肢の大関節全体では、非麻痺側が90%で麻痺がない上下肢でも制限がある実態が確認された。麻痺側では全体の83%で非麻痺側よりも制限角度が大きかった。関節ごとに非麻痺側と麻痺側で比較した場合、膝関節以外のすべての関節において、麻痺側の制限角度が大きかった。また、肩関節、肘関節、前腕、手関節、足関節では、非麻痺側と麻痺側との制限角度の差が有意に認められた。さらに、麻痺側において制限角度が比較的大きい関節は、足関節、股関節、手関節、肩関節であり、膝関節、肘関節、前腕では制限が比較的小さかった。

②麻痺が重度なほど制限角度が大きい傾向がある

麻痺の程度は、ブルンストロームステージテストで評価している。ステージごとに制限角度を上下肢に分けて比較すると、ステージⅤ(分離運動が進んでおりある程度可能になっている時期)からステージⅡ(反射や連合反応での手足の運動が可能な時期)においてステージが低いほど制限角度が大きくなる傾向が認められた。つまり、麻痺が重度であるほど制限角度が大きい傾向にあるということであった。ステージⅠ(動かせず、筋緊張もあがっていない時期)の上肢では制限が比較的認められなかったのは、ステージⅠにおける弛緩性の筋緊張が関与していると考えられ、拘縮と筋緊張の関連性が示唆されている。

③亜脱臼に着目した分析

82名のうち触診にて肩甲上腕関節に1横指以上の亜脱臼のあるものが34名で、ないものが48名であった。上肢の関節ごとに制限角度を亜脱臼の有無で比較すると、上肢全体では、亜脱臼のあるほうがないものよりも制限角度が有意に大きかった。なかでも、肩関節と手関節において、亜脱臼の有無で制限角度に有意な差が認められている。

以上が様々な研究データや論文から言われている片麻痺患者の拘縮の実態となっている。疾患特異性や症状の程度により、予後や筋肉の状態も違うことが分かります。脳梗塞の後遺症で片麻痺は最も多いが、そこからの二次的な障害は出来るだけ避けていきたいところである。

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