脳梗塞の方はまず「脳」を知ろう

脳ってなんだ?

脳はとても特殊な器官であり多くの特殊性を有しています。

①脳の重さ

脳の重さは1300~1400gで、成人体重のおよそ2%ほどです。ヒトは何をするにしても脳がなければ何もできません。脳が全ての行動に対する決定権を持っていますが、体重比で考えると、たったの2%なのです!この1kgちょっとの脳という臓器がいかに複雑に構成されているかが分かりますね。

②脳の酸素消費量

中枢神経は酸素とグルコースによる好気性解糖を営んでいますが、これらを神経細胞に蓄積することはできません。したがって、持続的に十分量の血流を保ち、血液により絶えず補給されなければなりません。脳におけるグルコースの消費量は一日で約100~150gです。酸素消費量は全体の20%を占めています。脳も意外と多くの酸素やグルコースを消費しています。頭を使うということはそれだけエネルギーを消費するということですね。

③脳細胞の再生

脳には約140億の神経細胞が存在しています。しかしこの細胞は、基本的に再生や増殖を繰り返すことはありません。病気や年を重ねることで減少していきます。と、されてきたのがこれまでの医療なのですが、最近の目まぐるしい再生医学の研究において、脳の神経細胞も再生するという報告がされています。つまり脳にも可塑性が存在するということです。ES細胞やiPs細胞などと呼ばれるもので、数種類の細胞に分化する機能があることが分かっています。動物実験では、その分化が確認されています。これがヒトの脳細胞に直接作用できると、これまでの脳梗塞や脳卒中を患った人の破壊された病巣に使えるのかもしれません。今後に期待ですね。

④脳の硬度

脳や脊髄などの中枢神経系は物理的な衝撃にとても弱いです。少しの衝撃で損傷を来してしまう臓器です。これらに物理的な刺激が入ると、脳挫傷や脊髄損傷などになります。そのため解剖学、生理学的にも中枢神経系とは、頭蓋骨や脊柱管、髄膜などによって保護されているのです。

⑤脳の浮腫

脳や脊髄は損傷や代謝障害などによって容易に浮腫を生じてしまいます。ようするにむくんでしまうということです。その結果、容積は増加してしまいます。浮腫が高度になると身近らを圧迫してしまい、浮腫自体を助長してしまう悪循環にも陥ることがあり、それにより脳ヘルニアなどを合併する恐れもあります。

⑥脳血流量

中枢神経系の血流量は、全身血圧がたとえ上昇していたとしても下降していたとしても、一定の変動範囲内であれば増減することなく一定に保つようになっています。自動調節脳機構という機能です。そのため血圧が変動したとしても、突然に脳の血流が変動しないようになっているのです。こういった機能を多々備えており、かつ自動的に状態状況に応じた調整がなされています。脳の機能は日々解明されていますが、その複雑性から更なる疑問も生じてきています。奥が深いですね。

脳のやる気スイッチを探せ!

「やる気がでない」「やりたくない」

なんて思うことありませんか?脳は常に働きながらも必要最低限の活動に抑えられており、無駄な活動はしていません。つまり、「やりたくないな~」と思っているときには、やる気スイッチはOFFになっています。脳には、やる気スイッチなるものが存在しています。

やる気スイッチ=側坐核

側坐核って、みなさん聞いたことありますか?側坐核とは、大脳半球の左右に一つずつある小さな神経細胞の集団です。「核」と呼ばれるところであるため、他の神経細胞と強い関連をもちます。

側坐核ってなに?

報酬や快感などに重要な役割があると考えられています。また、側坐核は主にドーパミンという神経伝達物質を放出します。ドーパミンは快楽や意欲、学習のときに放出されるためやる気にさせてくれる物質なのです。やる気がでなかったり、喜ぶことを感じられなかったり、何となく疲れていたり、なんて感じているときにはドーパミンはあまり出ていないということになります。つまり、この側坐核が刺激されるとどんどんやる気になっていくということになります。

側坐核を刺激するには?

①達成感を得る

側坐核は「報酬」と深く関連があります。報酬とは、欲望が満たされたときに得られる感覚です。つまり「達成感」を感じられることが「報酬」となるのです。

②達成感を積み重ねる

いきなり達成感を得ようとしても中々上手くいきません。まずは小さいことを少しずつ実行していくことで達成感を得ることにつながっていきます。目標や報酬となるものに対して、小さく刻んだステップを考えていくとよいでしょう。

③まずは実行してみる

側坐核は行動に移らない限りは原則的に働いてきません。

「やる気がでない…」

なんて思っていても、そのやる気を出すためには何よりもまず「行動する」こと。行動することで側坐核はだんだんと働いてくるのです。重い腰を上げるようで、これが最も重要かつ難題のような気がしますが、やる気とは得てしてそういうものですね。

リハビリにおける側坐核の重要性

”麻痺から回復した手の巧緻性が、側坐核が不活性化すると再び障害されてしまう”

側坐核は運動を司る大脳との関連をもつため、側坐核が働かなくなることで運動やリハビリに対する意欲が低下し機能が障害されてしまったり、回復を妨げることとなります。特に運動機能の回復における初期段階では、側坐核によって活性化された運動を司る大脳の活動が手の運動機能の回復を支えています。やる気や意欲があることがリハビリにおける回復に効果的であり、そのためには行動に移しそれを続けていくことで、初めはいやいやでも、段々と意欲につながっていく。無理やりでは逆に不快な刺激となりかねないことですが、少しでも重い腰を上げられる思いがあるのなら、それをチャンスだと思ってやる気を出していきたいですね。

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